この存在感の薄さ、もはや空気。どこでもあるけれど目に入らない、雑草オブ雑草

ナデシコ科ツメクサ属の、春~初夏の野草。

もしも図鑑でこの花の写真を見ても、「ああ、見たことのある花だ!」とはなかなか思わないのではないでしょうか。なぜと言うに、この草を見かける時、人は「草を見た」と認識しないからです。
この存在感のなさ、もはや空気!

でもね、絶対に毎日見ています。実際に道端に出かけて、「これだよ」と指をさされれば、「ああ!」となります。そう、視界のどこかに入っているんです、意識しないだけで。そのぐらい、どこにでもあります。家を出てちょっと歩いたら見つかると思います。

花の時期は春から初夏のころ。草はずっとありますが、花が咲いている時期に見かけてもやっぱりあんまり気にしないかも。と言うのも、とっても小さいんです。花の大きさ3~4mm程度。
かなり気にしてチェックしないと目に入りませんが、じつはとっても可愛い花です。

ハコベノミノツヅリと同じナデシコ科で、似たような白い5枚の花びら。ガクが大きくて、5枚の花びらの間からはみ出します。花だけ見ると、ノミノツヅリに似ていますが、それよりもさらに小さく、また全体的な雰囲気がだいぶ違うので迷うことはないと思います。

図鑑で見ても「ああこれか!」と思えないのは、花の可愛さのせいだと思います。図鑑の写真ではこの可愛らしい花が大きく写っているので、そこらじゅうにある空気みたいな草と結びつかないんですよね……ちょっと残念。

さらに特徴的なのは、葉っぱの形。線のような細い葉が、2枚(2本と数えたくなる細さですが)ずつ並んで付きます。この葉は細いけれど肉厚で、幅と厚さがあまり変わらないくらい。形が鳥の爪に似ているのが、「ツメクサ」という名前の由来です。

そしてこの草、最大の特徴は、さんざん述べた通り「どこにでも生える」こと。
アスファルトの隙間……どころか、そこ隙間あります!?みたいな場所にも生えちゃいます。道路の脇はモチロンですが、ちょっと車通りの少ない道なら道路の真ん中にも生えちゃいます。

とても小さいので、ほかに大きな植物が生えている場所で埋もれるとちょっと困る。でも隙間にコンパクトに収まって人が踏んでもそれほどダメージを受けないくらいに小さいから、他の草が生えないような道の真ん中やほんの少しの隙間でも生活できる。そんな場所を独占するのが、この草の生存戦略のようです。

道端に最適化したと言っても良さそうなこの草、まさに雑草オブ雑草! でも、「雑草を抜くぞ!」と思っても、この草はスルーしそう。なんていうか、ジャマにもならない。地面の一部なんですよね。

めちゃくちゃあるのに人の目に入らずひっそりと咲いているこの小さな花。ぜひ探してみてください!

なお、名前の由来は前述の通り鳥の爪に似ているからで、漢字で書くと「爪草」です。シロツメクサやアカツメクサなどのクローバーたちは、荷物の緩衝材として日本に入ってきたことから漢字で書くと「詰草」で、まったくの他人ならぬ他草。あちらは「〇〇ツメクサ」という名で呼ばれ、前に何も付かない「ツメクサ」というのは、この草です。

ツメクサ
分類ナデシコ科 ツメクサ属
花の時期3~7月ごろ
分布と生息地全国 / 道端、アスファルトの隙間、道の真ん中、公園、庭
花の色・大きさ白 / 花全体の大きさ3、4mm程度
花の形・特徴・花びらは5枚。花びらの間からガクが見える
茎や葉の特徴・高さは2~20cm程度。基本的に背が低いが、広めの場所では上に伸びる
・葉は線形で、肉厚。先が尖る。鳥の爪に似ているのが名前の由来
その他の特徴・ものすごく小さな隙間に生えている度ナンバーワン

ツメクサと似ている野草

ノミノツヅリ

ハコベ